労働局に相談した翌日。
私は自室でひとり、支店長が作成した文書(※1)を読み返しました。
彼の主張は、事実とは異なることばかりでした。
(※1 「9セカンドハラスメント」の「支店長のやりそうなこと」に記載)
彼は冒頭から嘘をついていました。
いかにも迅速に対処したかのように、『○○支店へ仕事に来ることも、仕事の電話も禁止した』と述べ、そのあとで『T山が支店にきてしまった』としているが、逆です。
支店長は会議のあとになってT山に話をしたのです。しかも会議を『翌日』としていますが、その日は会議の通達があった日であり、会議がひらかれたのは「翌々日」でした。つまり、私が相談してから会議までは丸一日あいていたのです。それなのに支店長は何もしませんでした。彼に非があります。
次に、私は電話で「嘘をついたんですか」と支店長に訊いたことがあった(※2)けれど、それを『嘘つき呼ばわりされた』と誇張するのは、あまりに悪意を感じるものです。
(※2 そのやりとりは「7支店長へのSOS」の「二度目の約束」に記載)
それから、『そうならないように努力する』と述べているが、あのとき支店長は「もう二度とT山を支店に来させないし、電話もさせない」「全面的に解決します」と断言し、それだけではなく「もう一度だけ信じてください」と懇願までしたのです。
そこまで約束しておきながら、T山を支店に来させてしまった負い目があるから、支店長は「断言」を『努力』と置き換え、自分の非を隠そうとしたのです。
そして、『T山は○○支店に必要な人材であり──』と、なぜかT山の評価をしているのですが、だからセクハラしてもOKなのか?
詭弁です。
たとえその人間が、どんなに会社に必要な人材であったとしても、セクハラはけっして許されない行為です。それを認知できずに助長までする支店長みたいなのがいるから、セクハラは減らないのです。
そのあとには、セクハラを否定する文章が続いているが、それを私には一言も告げず、あたかも味方であるかのように私の言い分を全面的に認めた行為は、卑怯なまでに誠意がありません。
ましてや私は、T山を「かわいい」と言ったことはまったくありませんでした。もとより私は成人男性に対してかわいいという感情を持たず、思っていないことは口にできない性分なので、恋人にも「かわいい」と言ってあげたことがなかったというのに、何がくやしくてT山に言わねばならないのでしょう。
支店長こそ、「HちゃんはTちゃんのことが好きだから」などと勝手なことを言っていた張本人ではないか!
次の、『皆が相当彼女に気をつかっている』とは、具体的にどんなふうになのでしょうか。
私は、会社の誰かにセクハラのことで気づかわれたり、助けられたりしたことなどありませんでした。
たとえ気をつかっていたとしても、私を責めるのは筋違いです。
それにしても彼は、『皆も楽しそうだったと言う』『他の社員も同じ意見だ』『他の社員も聞いている』『我々皆の意見である』と、やたら「皆」「他の社員」というワードを多用し、もう一回『皆が相当彼女に会社で気をつかっている』と、しつこい。
これらが意味することとは、「俺はひとりじゃない。こっちには大勢いるんだ」ということを示したいだけなのかもしれないし、あるいは、のちのち何かあったときに、「俺が言ったんじゃない。皆が言ったんだ」と、責任逃れするための伏線をはっているようにもとれました。
そういえば、本件とは無関係のことだったのですが、過去にそういう現場を私は見たことが何度かありました。人を丸め込んで味方につけることは、支店長の常套手段でした。そして憎たらしいことに、その卑怯な才能に長けていたのです。
最後の『要は彼女の性格の問題だ』というのには、胸を切り焼かれました。
ついに支店長は、人格を中傷してその尊厳を奪うという、人として劃するべき一線を、とどめを刺すためにとび越えたのです。
終わりだと思いました。
支店長は人として終わりました。
私は殺されました。
私は、いつまでも文書を読み返していました。何度も、何度も……。
くやしくてくやしくて、声を殺して泣きました。
なぜ支店長は、私が相談したときに引き止めたりしたのか? 私を信じたのは芝居で、解決を約束したのは嘘だったのか?
私は、支店長を許せませんでした。
女にだって心はある。
これほどまでに他人を傷つけた者が、何の制裁も受けずに、したり顔で社会に座を占めていていいはずがない。だから私は、泣き寝入りはしたくなかったし、してはいけないと思いました。
そのためには、父に事情を話さなければなりませんでした。
自分の娘が会社でつらい目にあったことを知ったら、父はどう思うでしょう。私のために親が胸を痛める姿は見たくありませんでした。
しかし、そうやって心配かけまいとずっと話さずにきたけれど、もう家族の理解なしにはやっていけないところまできてしまいました。
そんなことを考えているあいだ中、目からは涙がボロボロとこぼれ落ちてきました。
こんな顔は見せられない――とても話せそうにありませんでした。
結局この日は、一度も食事をとらず、一日中部屋で泣き続けました。
話さなければならないのに、それができませんでした。
きっと、このまま話せないだろう、と思っていました。
私は自室でひとり、支店長が作成した文書(※1)を読み返しました。
彼の主張は、事実とは異なることばかりでした。
(※1 「9セカンドハラスメント」の「支店長のやりそうなこと」に記載)
彼は冒頭から嘘をついていました。
いかにも迅速に対処したかのように、『○○支店へ仕事に来ることも、仕事の電話も禁止した』と述べ、そのあとで『T山が支店にきてしまった』としているが、逆です。
支店長は会議のあとになってT山に話をしたのです。しかも会議を『翌日』としていますが、その日は会議の通達があった日であり、会議がひらかれたのは「翌々日」でした。つまり、私が相談してから会議までは丸一日あいていたのです。それなのに支店長は何もしませんでした。彼に非があります。
次に、私は電話で「嘘をついたんですか」と支店長に訊いたことがあった(※2)けれど、それを『嘘つき呼ばわりされた』と誇張するのは、あまりに悪意を感じるものです。
(※2 そのやりとりは「7支店長へのSOS」の「二度目の約束」に記載)
それから、『そうならないように努力する』と述べているが、あのとき支店長は「もう二度とT山を支店に来させないし、電話もさせない」「全面的に解決します」と断言し、それだけではなく「もう一度だけ信じてください」と懇願までしたのです。
そこまで約束しておきながら、T山を支店に来させてしまった負い目があるから、支店長は「断言」を『努力』と置き換え、自分の非を隠そうとしたのです。
そして、『T山は○○支店に必要な人材であり──』と、なぜかT山の評価をしているのですが、だからセクハラしてもOKなのか?
詭弁です。
たとえその人間が、どんなに会社に必要な人材であったとしても、セクハラはけっして許されない行為です。それを認知できずに助長までする支店長みたいなのがいるから、セクハラは減らないのです。
そのあとには、セクハラを否定する文章が続いているが、それを私には一言も告げず、あたかも味方であるかのように私の言い分を全面的に認めた行為は、卑怯なまでに誠意がありません。
ましてや私は、T山を「かわいい」と言ったことはまったくありませんでした。もとより私は成人男性に対してかわいいという感情を持たず、思っていないことは口にできない性分なので、恋人にも「かわいい」と言ってあげたことがなかったというのに、何がくやしくてT山に言わねばならないのでしょう。
支店長こそ、「HちゃんはTちゃんのことが好きだから」などと勝手なことを言っていた張本人ではないか!
次の、『皆が相当彼女に気をつかっている』とは、具体的にどんなふうになのでしょうか。
私は、会社の誰かにセクハラのことで気づかわれたり、助けられたりしたことなどありませんでした。
たとえ気をつかっていたとしても、私を責めるのは筋違いです。
それにしても彼は、『皆も楽しそうだったと言う』『他の社員も同じ意見だ』『他の社員も聞いている』『我々皆の意見である』と、やたら「皆」「他の社員」というワードを多用し、もう一回『皆が相当彼女に会社で気をつかっている』と、しつこい。
これらが意味することとは、「俺はひとりじゃない。こっちには大勢いるんだ」ということを示したいだけなのかもしれないし、あるいは、のちのち何かあったときに、「俺が言ったんじゃない。皆が言ったんだ」と、責任逃れするための伏線をはっているようにもとれました。
そういえば、本件とは無関係のことだったのですが、過去にそういう現場を私は見たことが何度かありました。人を丸め込んで味方につけることは、支店長の常套手段でした。そして憎たらしいことに、その卑怯な才能に長けていたのです。
最後の『要は彼女の性格の問題だ』というのには、胸を切り焼かれました。
ついに支店長は、人格を中傷してその尊厳を奪うという、人として劃するべき一線を、とどめを刺すためにとび越えたのです。
終わりだと思いました。
支店長は人として終わりました。
私は殺されました。
私は、いつまでも文書を読み返していました。何度も、何度も……。
くやしくてくやしくて、声を殺して泣きました。
なぜ支店長は、私が相談したときに引き止めたりしたのか? 私を信じたのは芝居で、解決を約束したのは嘘だったのか?
私は、支店長を許せませんでした。
女にだって心はある。
これほどまでに他人を傷つけた者が、何の制裁も受けずに、したり顔で社会に座を占めていていいはずがない。だから私は、泣き寝入りはしたくなかったし、してはいけないと思いました。
そのためには、父に事情を話さなければなりませんでした。
自分の娘が会社でつらい目にあったことを知ったら、父はどう思うでしょう。私のために親が胸を痛める姿は見たくありませんでした。
しかし、そうやって心配かけまいとずっと話さずにきたけれど、もう家族の理解なしにはやっていけないところまできてしまいました。
そんなことを考えているあいだ中、目からは涙がボロボロとこぼれ落ちてきました。
こんな顔は見せられない――とても話せそうにありませんでした。
結局この日は、一度も食事をとらず、一日中部屋で泣き続けました。
話さなければならないのに、それができませんでした。
きっと、このまま話せないだろう、と思っていました。




