「面白い店」でのつづきです。
彼が店に現れました。N氏の友人のI氏です。
N氏は自分が座っていたシートを彼に譲ると、私の隣に移動しました。
一見、優しそうな彼の目をのぞき込めば、なるほど鋭く光っているのがわかりました。
怒らせたらこわそうだ……ほんとに「いい人」だと信じていいんだね、Nさん? と確かめることはできなかったけど、話しているうちに、N氏が彼に好意を持つ理由がわかったような気がしました。
彼はなんとも威厳があり、その目と同じくして話し方も冷静で、世の中に対する常識を持っていました。
ただ、現役時代の話だけは、私の体をこわばらせたものでした。
話が途切れたところで、N氏が私に言いました。
「Iくんに相談してみたら?」
(え、なんで。だってきょう会ったばっかりなのに。しかもセクハラの話だよ)
私が内心焦ってI氏を見ると、彼は相変わらず冷静な光を放つ瞳で私を見据えました。
(鋭すぎる。話すしかあるまい)
なにせ長い長い話なので、私はなるべく簡潔に説明しました。泣かないでちゃんと話せました。
私は、
「行政指導をする意味ってあると思いますか」
と、I氏に答えを求めました。
「あるよ。行政指導が入るなんて恥だからね。会社の信用に関わるから、取引先の銀行とかに知られたら嫌だろうね」
「そうですね。でも、個人の問題には介入できないって言われたんです」
「そうなると、あとは裁判で決着をつけるしかないよね。今の日本では、物事を解決するには金以外の方法は何もないからね」
I氏は、さらりと言いました。正論です。
N氏も同意しました。
ですが、私は不安を話しました。I氏なら正面から受け取ってくれると思ったから。
「でも、証拠もないし、私のために証言してくれる人もいないから、負けるかもしれない……」
I氏は顔色を変えずに言いました。
「たしかに今の法律では負けるかもしれないよ。だけど、裁判は長いから、何年もかけてやっていくあいだに法律が変わるかもしれない。そしたら、その法律で戦っていけるから勝てるかもしれないんだよ」
私にはそんな知識はありませんでした。なぜ彼はそんなことを知っていたのでしょう。不思議な人だと思いました。
彼が店に現れました。N氏の友人のI氏です。
N氏は自分が座っていたシートを彼に譲ると、私の隣に移動しました。
一見、優しそうな彼の目をのぞき込めば、なるほど鋭く光っているのがわかりました。
怒らせたらこわそうだ……ほんとに「いい人」だと信じていいんだね、Nさん? と確かめることはできなかったけど、話しているうちに、N氏が彼に好意を持つ理由がわかったような気がしました。
彼はなんとも威厳があり、その目と同じくして話し方も冷静で、世の中に対する常識を持っていました。
ただ、現役時代の話だけは、私の体をこわばらせたものでした。
話が途切れたところで、N氏が私に言いました。
「Iくんに相談してみたら?」
(え、なんで。だってきょう会ったばっかりなのに。しかもセクハラの話だよ)
私が内心焦ってI氏を見ると、彼は相変わらず冷静な光を放つ瞳で私を見据えました。
(鋭すぎる。話すしかあるまい)
なにせ長い長い話なので、私はなるべく簡潔に説明しました。泣かないでちゃんと話せました。
私は、
「行政指導をする意味ってあると思いますか」
と、I氏に答えを求めました。
「あるよ。行政指導が入るなんて恥だからね。会社の信用に関わるから、取引先の銀行とかに知られたら嫌だろうね」
「そうですね。でも、個人の問題には介入できないって言われたんです」
「そうなると、あとは裁判で決着をつけるしかないよね。今の日本では、物事を解決するには金以外の方法は何もないからね」
I氏は、さらりと言いました。正論です。
N氏も同意しました。
ですが、私は不安を話しました。I氏なら正面から受け取ってくれると思ったから。
「でも、証拠もないし、私のために証言してくれる人もいないから、負けるかもしれない……」
I氏は顔色を変えずに言いました。
「たしかに今の法律では負けるかもしれないよ。だけど、裁判は長いから、何年もかけてやっていくあいだに法律が変わるかもしれない。そしたら、その法律で戦っていけるから勝てるかもしれないんだよ」
私にはそんな知識はありませんでした。なぜ彼はそんなことを知っていたのでしょう。不思議な人だと思いました。




