私が相談したとき、支店長はこんな話もしていました。
「この前Tちゃんの奥さんから電話がかかってきて、二時間も話したよ」
「えっ? 奥さんと二時間もですか」
「うん。Hちゃんがこういう相談をしてきたから話すけど、じつは、このあいだの出張中、俺の携帯に電話がかかってきたんだよ」
「二時間も何を話していたんですか」
「それがさ、『うちの主人、浮気をしてるんじゃないでしょうか』って言うんだよ。たしかにTちゃんは支店に来ると、飲み屋の女の子と会っているみたいだけど、そんなこと言えないしさ。そんなことないですよって言って聞かせたんだけど、電話を切ってくれないんだよ」
知りたがっているのだから、真実を教えてあげればよかったのに。男同士の連帯感というものだろうか、くだらないけど憎らしい。
「なかなか信じてくれないから、本人に訊けばいいじゃないですかって言ったんだよ。そしたら、『訊いたけど、ろくに返事すらしてくれない』って言うんだ」
次長は自分の都合が悪いとき、それが通用すると思っているのか、ダンマリを決め込みました。私はそれがとても卑劣に思えてなりませんでした。たしかに自分が何も言わなければ、相手は諦めるかもしれません。しかしそれは逃げであり、自分のことに責任を持てない、幼稚で傲慢な人間のすることだと思います。
「ただ、前にね、『若い女の子と話をするのが、今、一番楽しくて仕方がない』って言われたことがあるらしいんだ」
「次長がそんなこと言ったんですか? 奥さんに? 信じられない」
「そうなんだよ。それで、『W(支店長のこと)さん、知っていることを教えてください』ってしつこくて。俺、もう嫌になっちゃったよ。そんなのどうでもいいよって思ってさ」
支店長はうんざりした表情になりました。
「それで、どうしたんですか」
「とにかく大丈夫だから、そんなこと絶対ないからって言い聞かせて、やっと切ったよ。二時間だよ、二時間」
まあ、それは気の毒に。私は、皮肉ではなく心から同情しました。
支店長はひと通り話し終えると、少しニヤつきながら、
私はがっくりきました。私が深刻な悩みを相談したことは、この男にとっては「女の子と話をする」という軽い感覚だったのです。
あまりに無神経ではないか!
この男も、次長と同じ側の人間ではないかと疑いました。
そして、こんな男を頼るしかない自分が情けなく思えてきました。
やがて支店長は、また自信たっぷりにこう言いました。
「私が全面的に解決しますから」
……ほんとうだろうか?
しかしこれだけはっきり約束してくれたのです。
きっと私を救ってくれる――そう自分に言い聞かせて、あとは支店長に任せることにしました。
「この前Tちゃんの奥さんから電話がかかってきて、二時間も話したよ」
「えっ? 奥さんと二時間もですか」
「うん。Hちゃんがこういう相談をしてきたから話すけど、じつは、このあいだの出張中、俺の携帯に電話がかかってきたんだよ」
「二時間も何を話していたんですか」
「それがさ、『うちの主人、浮気をしてるんじゃないでしょうか』って言うんだよ。たしかにTちゃんは支店に来ると、飲み屋の女の子と会っているみたいだけど、そんなこと言えないしさ。そんなことないですよって言って聞かせたんだけど、電話を切ってくれないんだよ」
知りたがっているのだから、真実を教えてあげればよかったのに。男同士の連帯感というものだろうか、くだらないけど憎らしい。
「なかなか信じてくれないから、本人に訊けばいいじゃないですかって言ったんだよ。そしたら、『訊いたけど、ろくに返事すらしてくれない』って言うんだ」
次長は自分の都合が悪いとき、それが通用すると思っているのか、ダンマリを決め込みました。私はそれがとても卑劣に思えてなりませんでした。たしかに自分が何も言わなければ、相手は諦めるかもしれません。しかしそれは逃げであり、自分のことに責任を持てない、幼稚で傲慢な人間のすることだと思います。
「ただ、前にね、『若い女の子と話をするのが、今、一番楽しくて仕方がない』って言われたことがあるらしいんだ」
「次長がそんなこと言ったんですか? 奥さんに? 信じられない」
「そうなんだよ。それで、『W(支店長のこと)さん、知っていることを教えてください』ってしつこくて。俺、もう嫌になっちゃったよ。そんなのどうでもいいよって思ってさ」
支店長はうんざりした表情になりました。
「それで、どうしたんですか」
「とにかく大丈夫だから、そんなこと絶対ないからって言い聞かせて、やっと切ったよ。二時間だよ、二時間」
まあ、それは気の毒に。私は、皮肉ではなく心から同情しました。
支店長はひと通り話し終えると、少しニヤつきながら、
「でも、こうしてHちゃんとふたりきりで話をするなんていいね。
やっぱり女の子と話をしていると楽しいですよ」
やっぱり女の子と話をしていると楽しいですよ」
私はがっくりきました。私が深刻な悩みを相談したことは、この男にとっては「女の子と話をする」という軽い感覚だったのです。
あまりに無神経ではないか!
この男も、次長と同じ側の人間ではないかと疑いました。
そして、こんな男を頼るしかない自分が情けなく思えてきました。
やがて支店長は、また自信たっぷりにこう言いました。
「私が全面的に解決しますから」
……ほんとうだろうか?
しかしこれだけはっきり約束してくれたのです。
きっと私を救ってくれる――そう自分に言い聞かせて、あとは支店長に任せることにしました。




