『セクシュアルハラスメント』と『セカンドハラスメント(二次的嫌がらせ)』の被害者の声です。
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N氏との約束の日。
私たちは、駅前のビルの中にある店で何か食べることにしました。
初めて入った店内はけっこう広く、若者向けでしたが、落ち着いた雰囲気を感じさせました。
若いウェイターは、店の奥の窓に面したテーブルまで案内してくれました。私は窓を背に、N氏とテーブルをはさんで腰をおろしました。
平日のためか、私たちから離れた壁際のテーブル席に一組の客がいるだけで、周りには誰もいませんでした。他人に話を聞かれる心配なく相談できそうでした。
照明は薄暗く、ちょっと暗すぎるとさえ感じました。けれど、深刻な打ち明け話をするには好個な空間でした。

私たちがカクテルと何品かの料理を注文して、オーダーを伝えにウェイターが去っていくと、N氏が尋ねました。
「話ってなんなの?」
私は、いつになく緊張していましたが、それをごまかそうと笑いながら、 
「うん……もしかしたら、Nさん、怒るかもしれないんだけど……」
N氏は見当もつかないらしく、私が続けようとする話に耳を傾けました。
私は必死に説明しました。『スナックA』と『スナックB』でT次長に手を握られたこと、自宅にかかってきた電話について、再び訪れた『スナックB』で背中をなでまわされたことを。

N氏は「なるほどね」という顔で、たばこに火をつけました。
私は、F子の「面白くない」発言についても話すことにしました。
「それでね、同期の子にはけっこう話をしてたんだけど、ひどいこと言われたの」
N氏は得心しているという顔で言いました。
「ああ、よくあるよね、そうゆうのって。被害者のほうに隙があったとか、誘惑したとか、そういうこと言われたんでしょ」
「ううん、そうじゃないけど……」私は事情を説明しました。人の不幸が面白くてしょうがないF子が、私の身に災難が訪れることを胸ときめかせて期待しているということを。

話し終えて胸が悪くなりましたが、私は次に進みました。
「でも、私が悪いとは言われたことはないし、これからもないと思う。うん、それだけは絶対にない」
私は言い切りました。セカンドハラスメントの心配だけは絶対にないと思っていたからです。
セカンドハラスメントについての説明は、「セカンドハラスメントとは」をご参照ください)

ただ、この時点での私は、セカンドハラスメントの被害者が受ける傷がどんなに深いものであるかを知りようもなかったし、知ることになろうとは微塵も考えていませんでした。

N氏のほうは私と違ったようで、「ほんとうに心配ないのかな?」と言いたげな顔をしていました。
私は気になったけれど、彼が追求しなかったから、黙っていました。


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