『セクシュアルハラスメント』と『セカンドハラスメント(二次的嫌がらせ)』の被害者の声です。
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鼻クソも汚かったけれど、もっと許せないことがありました。

次長にセクハラをされるようになってから(スナックAでのセクハラのあと)のことでした。
ある日、次長と事務所でふたりきりになったとき、急に次長が「このあいだ電話したんよ」と言い出しました。

私はすぐには何のことかわかりませんでした。
が、少し考えて、(あっ、そういえば)と思い出したのです。

さかのぼって日曜日のことでした。いつもより遅い朝を迎えた私がリビングにおりていったら、母に「フジヤマさんって人から電話があったよ」と伝えられました。母が「娘はまだ寝ている」と言ったら、相手は用件も言わずに切ったというのです。
私はフジヤマなんて人は知らないし、電話があったのが七時だというから気味が悪くなりました。それでアポイントセールスだと思うことにしたのでした。
あの電話の主が次長だったのです。おそらく次長は割れた声でボソボソと名乗ったのでしょう。だから、母が聞き違えてしまったのです。

「ああ、あれ次長だったんですか」
私は言いました。そのあとは、次長が用件について何か言うと思い、黙っていました。

そうしたら、次長が、
「なんか冷たい感じの人やね」
と言うではないですか。

「母のことですか」私は問いました。

次長はまたしても、
「うん、冷たい感じの人やね」
と、真顔で母を批判したのです。

私は、こんなふうに人の親を悪く言う人間がいることを信じられませんでした。だいたい、普通の親ならば、娘に宛てて正体不明の不審な男から電話がかかってきたときに警戒するのは当然です。
そんな母に対して次長は、日曜の早朝に電話をかけるという非常識を非常識とは思いもせず、会社名を告げて身分を明かすでもなかった無礼を恥じるどころか文句を言ったのです。
次長は自分のことを、私たち母娘にとっての何だと思っているのだろうか、と私は腹が立ちました。

次長がそこまで言うならば、と私は『スナックA』でのことを話しました。
「さゆりに股間を触らせていましたよね」
嫌悪感たっぷりに言ってやりました。

次長は、
「覚えとらん」
と小さく言っただけで、黙りました。

そんなはずはありません。もし仮にそうだったとしても、次長のように、飲まなくてもいいのに勝手に飲んで、勝手にセクハラしたというのでは、こっちは迷惑千万です。酒を飲む飲まないが本人の自由である以上、その管理責任はやはり自己にあると思います。酔いが覚めてから「覚えてません」と一言で片づけて逃げようったって通用しません。

私はしらけて繰り返しました。
「さゆりに触られていましたよ。そのあと、私の手を握ってきましたよね」

「いや、覚えとらん」
次長は、この言葉しか知らないみたいに、あとは黙っておとなしくなりました。横顔がこわばっていました。絶対に私を見ようとしませんでした。

やっぱり嘘だな、と私は確信しました。

――と、このようなこともあり、だから私は、次長のことを、男として人として大嫌いだったのです。


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