M美に関する話が終わったあと、私はF子の様子ををうかがってみました。彼女は忙しそうではありませんでした――はっきり言って暇そうでした。
私の災難を面白がっていたF子でしたが、このときの私には、彼女しか相談できる者がいなかったので、思い切って、次長からの電話の件を話しました。
まず、次長が〈S〉という元ホステスと食事をしたらしく、なぜか私にその説明をしてきたことを話しました。
F子は、まったく驚きもせず口をひらきました。
「ああ、T次長、その人と食事したみたいですよ」
私は戸惑いました。F子がそんなことまで知っているとはどういうことなのでしょうか。変だな、と思いましたが、気を取りなおして続けることにしました。
次に、次長と元ホステスの交際を皆が噂しているけれど、それは違う、と私に弁解してきたことを話しました。
今度もまた、いたって冷静にF子が言いました。
「ええ、T次長とその女の人、つき合ってるみたいなんですよ」
私は先ほどと同じく困惑しました。
私は、次長がただわけのわからないことを話しているだけ、と思っていました。けれど、知らなかったのは私だけで、次長と元ホステスの交際を皆で噂していた事実があったのです。
おそらく、私が次長を無視し、会社の飲み会にも参加しなかったあいだ、支店長やM美らも一緒に、酒のつまみに噂していたのでしょう。
それにしたって、私には関係ないことです。
私は目をむいて、F子に訊きました。
「なんで次長は、私にそんな話をしたわけ?」
「そういえば、あたし、前に『スナックB』で次長と話をしたんだ。カラオケしてたときなんだけど、次長が『口説きたくても、自分の立場上できない』とか言ってて、あたし、誰のことなのかわかんなくて、たぶん飲み屋の女の子のことかと思ってたんだ。――そっかあ、Hさんのことだったんだあ」
私は思い出しました。『スナックB』で、次長から指輪を取り返したあとに、次長とF子が深刻な顔をして話しこんでいたことを。
あのとき次長は、F子に──人もあろうに部下のF子に、くだらない恋愛相談をしていたというのです。
なんじゃそりゃ!
私は頭にきて、怒鳴りました。
「なにそれ、ふざけんな! いいかげんにしろっつーの!」
そんな私に、F子はわずかに焦りの色を見せ、新たな情報を提供してきまた。
「あのね、あたし、この前『スナックB』に行ったんだけど、そのときママが『Hさんがセクハラされてる。すっごく嫌そうな顔をしてたから、あれはまずい』って言ってた。あたし、ふーん、そうなんだあって聞いてたんだけど、課長も『あれはまずいよね』って言ってた」
F子の「ふーん、そうなんだあ」という無神経な反応はしゃくに障ったが、それでもママと課長がセクハラを認知していることを知り、私はそれを救いと感じました。
他人から見ても私が嫌がっているのは明らかで、『正真正銘のセクハラ』であるとの証明になるからです。
少し気が楽になったものの、F子を見たら、また不快になりました。彼女は、M美の件とはうってかわって、私を心配したり励ましたりということはなく、知らん顔していました。
私はもうこれ以上彼女のことをあてにしても無駄だと、いいかげん思い知らされたのでした。
私の災難を面白がっていたF子でしたが、このときの私には、彼女しか相談できる者がいなかったので、思い切って、次長からの電話の件を話しました。
まず、次長が〈S〉という元ホステスと食事をしたらしく、なぜか私にその説明をしてきたことを話しました。
F子は、まったく驚きもせず口をひらきました。
「ああ、T次長、その人と食事したみたいですよ」
私は戸惑いました。F子がそんなことまで知っているとはどういうことなのでしょうか。変だな、と思いましたが、気を取りなおして続けることにしました。
次に、次長と元ホステスの交際を皆が噂しているけれど、それは違う、と私に弁解してきたことを話しました。
今度もまた、いたって冷静にF子が言いました。
「ええ、T次長とその女の人、つき合ってるみたいなんですよ」
私は先ほどと同じく困惑しました。
私は、次長がただわけのわからないことを話しているだけ、と思っていました。けれど、知らなかったのは私だけで、次長と元ホステスの交際を皆で噂していた事実があったのです。
おそらく、私が次長を無視し、会社の飲み会にも参加しなかったあいだ、支店長やM美らも一緒に、酒のつまみに噂していたのでしょう。
それにしたって、私には関係ないことです。
私は目をむいて、F子に訊きました。
「なんで次長は、私にそんな話をしたわけ?」
「そういえば、あたし、前に『スナックB』で次長と話をしたんだ。カラオケしてたときなんだけど、次長が『口説きたくても、自分の立場上できない』とか言ってて、あたし、誰のことなのかわかんなくて、たぶん飲み屋の女の子のことかと思ってたんだ。――そっかあ、Hさんのことだったんだあ」
私は思い出しました。『スナックB』で、次長から指輪を取り返したあとに、次長とF子が深刻な顔をして話しこんでいたことを。
あのとき次長は、F子に──人もあろうに部下のF子に、くだらない恋愛相談をしていたというのです。
なんじゃそりゃ!
私は頭にきて、怒鳴りました。
「なにそれ、ふざけんな! いいかげんにしろっつーの!」
そんな私に、F子はわずかに焦りの色を見せ、新たな情報を提供してきまた。
「あのね、あたし、この前『スナックB』に行ったんだけど、そのときママが『Hさんがセクハラされてる。すっごく嫌そうな顔をしてたから、あれはまずい』って言ってた。あたし、ふーん、そうなんだあって聞いてたんだけど、課長も『あれはまずいよね』って言ってた」
F子の「ふーん、そうなんだあ」という無神経な反応はしゃくに障ったが、それでもママと課長がセクハラを認知していることを知り、私はそれを救いと感じました。
他人から見ても私が嫌がっているのは明らかで、『正真正銘のセクハラ』であるとの証明になるからです。
少し気が楽になったものの、F子を見たら、また不快になりました。彼女は、M美の件とはうってかわって、私を心配したり励ましたりということはなく、知らん顔していました。
私はもうこれ以上彼女のことをあてにしても無駄だと、いいかげん思い知らされたのでした。




