ここからは、「私のCaseB セクハラは終わらない」の続きです。
後日、会社での昼休みのことでした。
昼食後、私がトイレの洗面台で化粧直しをしていたら、あとからF子が来たので、このあいだのことを話してみようと思いました。
私は、鏡越しにF子を見ながら言いました。
「土曜日に、支店長と次長と『スナックB』に行ったんだけどさあ」
「えーっ、支店長、あの店に行ったんだ」とF子。
「うん。次長がしゃべっちゃったの」私は仏頂面で、次長を責めるように言いました。
「ふーん、そうなんだ。支店長も行ったんだ」
それを知らなかったことがくやしいのか、それともその場にいなかったことが不満なのか、F子は面白くなさそうでした。
私は続けました。「それでさ、次長に背中をなでられて、すごく嫌だったんだ」
F子はこう返してきました。
「へえ、そんなことがあったんだ。なんだあ、支店長、帰ればよかったのに」
どういう意味!?
私は憮然として言い返しました。
「冗談じゃない。支店長がいなかったら、次長とふたりきりだよ。支店長が帰ってたら、私だって帰ってたよ」
彼女は、残念そうに述べました。
「なんだあ、つまんないなあ。ふたりきりになってくれないと困るんだ。支店長、気がきかないなあ」
何がどう困るというのでしょうか?
なぜ支店長は気がきかないというのでしょう?
私のその疑問に、F子がケロッとした顔で答えを出しました。
「そうじゃないと、面白くない」
私は愕然としました。
彼女の言う「気がきかない」とは、私や次長にではなく、F子に対してということなのです。私の身に何も起こらなれば、F子は「面白くない」のです。
「ひどいね」
私は顔をしかめて、そう言うのがやっとでした。
しかしF子は、自分がひどいことを言ったという自覚がないのか、
「うん。面白くない」
と繰り返したのです。
「ひどいね」
私は軽蔑を込めた目を、鏡の中のF子に向けました。
F子は視線が合うと、私の様子にやっと気がついたのか、口をつぐみました。それでも、悪びれる様子もなく、平然とした顔をして化粧を続けていました。謝る気はないようでした。
どうしてそんなひどいことが言えるのか、私には理解できませんでした。
いつからこんなふうになってしまったのでしょう。
私たちは、入社してからしばらくは、同じ年頃の女同士、とても仲がよかったのです。一人前になって忙しくなるまでのあいだは、ふたりで飲みにも行ったし、彼女の愚痴にもつき合いました。仕事においても、ふたりで励まし合い、協力し合いながらがんばってきたのです。
それがいつの頃からか、彼女は変わりました。何かとつっかかってくるようになったのです。私のことを「この人」とか「この女」などと呼んだし、ひどいときには、食事の席で、ゴミを手渡しされそうになったこともありました。
そんなふうだったから彼女の異変には気がついていたものの、原因はわかりませんでした。たぶん、彼女のもともとの性格があらわれてきたのだろうと思いました。
なにせ彼女は普段の会話の中で、「人の不幸が面白くて仕方がない」と言ったり、そのくせ「自分は大好き」と平気で言ったりしていました。
いつも口癖みたいに言っていたから、ただの冗談とも思えなくて、どういう神経をしているのかと、私は彼女の性格を疑っていたのです。
それが、今回、まさに地であることが如実に表れました。
人の不幸は蜜の味というけれど、F子の場合、親しい人に対しても当てはまるのでしょう。
かつては私を頼ってきたというのに、立場が逆転したら、私には不幸を望んだのです。
私は、もう彼女とは口もききたくないと思いました。
気まずい空気が流れていました。
このままではまずいかな、と思ったのは、私のほうでした。
くやしかったけれど、F子と仲違いするわけにはいきませんでした。話を聞いてくれる者がほかにいなかったのだから。
情けないことに、こんなF子でも、私には必要だったのです。
後日、会社での昼休みのことでした。
昼食後、私がトイレの洗面台で化粧直しをしていたら、あとからF子が来たので、このあいだのことを話してみようと思いました。
私は、鏡越しにF子を見ながら言いました。
「土曜日に、支店長と次長と『スナックB』に行ったんだけどさあ」
「えーっ、支店長、あの店に行ったんだ」とF子。
「うん。次長がしゃべっちゃったの」私は仏頂面で、次長を責めるように言いました。
「ふーん、そうなんだ。支店長も行ったんだ」
それを知らなかったことがくやしいのか、それともその場にいなかったことが不満なのか、F子は面白くなさそうでした。
私は続けました。「それでさ、次長に背中をなでられて、すごく嫌だったんだ」
F子はこう返してきました。
「へえ、そんなことがあったんだ。なんだあ、支店長、帰ればよかったのに」
どういう意味!?
私は憮然として言い返しました。
「冗談じゃない。支店長がいなかったら、次長とふたりきりだよ。支店長が帰ってたら、私だって帰ってたよ」
彼女は、残念そうに述べました。
「なんだあ、つまんないなあ。ふたりきりになってくれないと困るんだ。支店長、気がきかないなあ」
何がどう困るというのでしょうか?
なぜ支店長は気がきかないというのでしょう?
私のその疑問に、F子がケロッとした顔で答えを出しました。
「そうじゃないと、面白くない」
私は愕然としました。
彼女の言う「気がきかない」とは、私や次長にではなく、F子に対してということなのです。私の身に何も起こらなれば、F子は「面白くない」のです。
「ひどいね」
私は顔をしかめて、そう言うのがやっとでした。
しかしF子は、自分がひどいことを言ったという自覚がないのか、
「うん。面白くない」
と繰り返したのです。
「ひどいね」
私は軽蔑を込めた目を、鏡の中のF子に向けました。
F子は視線が合うと、私の様子にやっと気がついたのか、口をつぐみました。それでも、悪びれる様子もなく、平然とした顔をして化粧を続けていました。謝る気はないようでした。
どうしてそんなひどいことが言えるのか、私には理解できませんでした。
いつからこんなふうになってしまったのでしょう。
私たちは、入社してからしばらくは、同じ年頃の女同士、とても仲がよかったのです。一人前になって忙しくなるまでのあいだは、ふたりで飲みにも行ったし、彼女の愚痴にもつき合いました。仕事においても、ふたりで励まし合い、協力し合いながらがんばってきたのです。
それがいつの頃からか、彼女は変わりました。何かとつっかかってくるようになったのです。私のことを「この人」とか「この女」などと呼んだし、ひどいときには、食事の席で、ゴミを手渡しされそうになったこともありました。
そんなふうだったから彼女の異変には気がついていたものの、原因はわかりませんでした。たぶん、彼女のもともとの性格があらわれてきたのだろうと思いました。
なにせ彼女は普段の会話の中で、「人の不幸が面白くて仕方がない」と言ったり、そのくせ「自分は大好き」と平気で言ったりしていました。
いつも口癖みたいに言っていたから、ただの冗談とも思えなくて、どういう神経をしているのかと、私は彼女の性格を疑っていたのです。
それが、今回、まさに地であることが如実に表れました。
人の不幸は蜜の味というけれど、F子の場合、親しい人に対しても当てはまるのでしょう。
かつては私を頼ってきたというのに、立場が逆転したら、私には不幸を望んだのです。
私は、もう彼女とは口もききたくないと思いました。
気まずい空気が流れていました。
このままではまずいかな、と思ったのは、私のほうでした。
くやしかったけれど、F子と仲違いするわけにはいきませんでした。話を聞いてくれる者がほかにいなかったのだから。
情けないことに、こんなF子でも、私には必要だったのです。




