忘れもしません。あの日は七月一日、土曜日でした。
いつもどおりに目覚まし時計が鳴りました。
私の勤めていた会社では、社員がローテーションを組み、土曜出勤する決まりだったのです。
私の担当は第二土曜日でした。ですが、この日は私が使用する新しいパソコンとデスクが納入されるため、会社に行かなくてはななりませんでした。
平日ただでさえハードに仕事をしているのだから、土曜日は休みたいと思いました。しかも本来ならきょうは休みのはずなのにと、何だか損したような気分になったものです。
私が事務所に着くと、皆はすでに来ていました。
支店長とF子のふたりは、営業のため、土曜日でもほとんど会社に出てきていました。
M美は、支店長の予定により、担当日でなくても出勤することが時々ありました。この日は、支店長が客先で打ち合わせがあるため、出社したようでした。
そして、パソコンの接続をするため、次長が本社から来ていました。
この会社で、パソコンに詳しく、支店まで来てくれる人間は次長山以外いなかったのです。
私は、仕方がないとわかっていても、次長の顔を見ると気が重くなりました。
デスクとパソコンが届いたので、私は早速、デスクの組み立てに取りかかりました。そのあとはパソコンの接続をしなければなりませんでした。
支店長は「じゃあ、行ってきます」と、打ち合わせに行くために事務所を出ました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夕方の五時になり、「それでは私、お先に失礼します」とF子が事務所を出て行きました。
土曜日は早く帰っていいことになっていました。
M美は、一時間ほど前に、支店長が事務所に戻ってくると、早速帰ってしまっていました。
支店長が、次長に尋ねました。
「けっこう時間かかるの? Tちゃん」
Tちゃんとは次長のことです。
自分の知っているほとんどの人間を呼び捨てかちゃん付けで呼ぶのが支店長の癖でした。
私は、パソコンの接続はすでに終わっていて、このときはインストールの作業に移っていました。
この作業、ほんとは必要なかったんです。元々インストール済みのパソコンだったのですから。それを、次長がドライブをひとつ増やそうとしたため、一からやりなおすことになってしまったのです。
次長の指示に従い、私はただ入力していただけなのだけれど、この作業が思いもよらず時間がかかっていて、当分、終わりそうにありませんでした。
支店長は自分の仕事を終えても、待ってくれているようでした。
もし帰る時間が遅くなれば、支店長が食事に誘ってくるでしょう。
だから早く帰りたいと思ったのですが、私が使用するパソコンなので、自分からは帰れないという状況でした。
私にはよくわからない作業だし、次長ひとりでできることだから、「帰っていいよ」と言ってくれるのを期待しました。
そもそも次長のせいでこうなったんです。私はとっくに帰れていたはずなんです。
が、次長にその気はないようでした。
私はもう帰ることを諦め、作業を続けました。
インストールの作業が終わったのは、もうすぐ七時になるころでした。
「じゃあ、これから飯に行きますか」と支店長が言いました。「Hちゃんも行くでしょ」
私が予想したとおりの展開になりました。
いつもの私なら断るところでした。でも、この日だけは断れませんでした。
支店長をさんざん待たせました。もし途中で帰られたら、次長とふたりきりになるところだったのです。
多少の不安はありましたが、支店長がいれば大丈夫、と思いました。
私は「あ、はい」と返事をして、彼らとともに事務所を出ました。
いつもどおりに目覚まし時計が鳴りました。
私の勤めていた会社では、社員がローテーションを組み、土曜出勤する決まりだったのです。
私の担当は第二土曜日でした。ですが、この日は私が使用する新しいパソコンとデスクが納入されるため、会社に行かなくてはななりませんでした。
平日ただでさえハードに仕事をしているのだから、土曜日は休みたいと思いました。しかも本来ならきょうは休みのはずなのにと、何だか損したような気分になったものです。
私が事務所に着くと、皆はすでに来ていました。
支店長とF子のふたりは、営業のため、土曜日でもほとんど会社に出てきていました。
M美は、支店長の予定により、担当日でなくても出勤することが時々ありました。この日は、支店長が客先で打ち合わせがあるため、出社したようでした。
そして、パソコンの接続をするため、次長が本社から来ていました。
この会社で、パソコンに詳しく、支店まで来てくれる人間は次長山以外いなかったのです。
私は、仕方がないとわかっていても、次長の顔を見ると気が重くなりました。
デスクとパソコンが届いたので、私は早速、デスクの組み立てに取りかかりました。そのあとはパソコンの接続をしなければなりませんでした。
支店長は「じゃあ、行ってきます」と、打ち合わせに行くために事務所を出ました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夕方の五時になり、「それでは私、お先に失礼します」とF子が事務所を出て行きました。
土曜日は早く帰っていいことになっていました。
M美は、一時間ほど前に、支店長が事務所に戻ってくると、早速帰ってしまっていました。
支店長が、次長に尋ねました。
「けっこう時間かかるの? Tちゃん」
Tちゃんとは次長のことです。
自分の知っているほとんどの人間を呼び捨てかちゃん付けで呼ぶのが支店長の癖でした。
私は、パソコンの接続はすでに終わっていて、このときはインストールの作業に移っていました。
この作業、ほんとは必要なかったんです。元々インストール済みのパソコンだったのですから。それを、次長がドライブをひとつ増やそうとしたため、一からやりなおすことになってしまったのです。
次長の指示に従い、私はただ入力していただけなのだけれど、この作業が思いもよらず時間がかかっていて、当分、終わりそうにありませんでした。
支店長は自分の仕事を終えても、待ってくれているようでした。
もし帰る時間が遅くなれば、支店長が食事に誘ってくるでしょう。
だから早く帰りたいと思ったのですが、私が使用するパソコンなので、自分からは帰れないという状況でした。
私にはよくわからない作業だし、次長ひとりでできることだから、「帰っていいよ」と言ってくれるのを期待しました。
そもそも次長のせいでこうなったんです。私はとっくに帰れていたはずなんです。
が、次長にその気はないようでした。
私はもう帰ることを諦め、作業を続けました。
インストールの作業が終わったのは、もうすぐ七時になるころでした。
「じゃあ、これから飯に行きますか」と支店長が言いました。「Hちゃんも行くでしょ」
私が予想したとおりの展開になりました。
いつもの私なら断るところでした。でも、この日だけは断れませんでした。
支店長をさんざん待たせました。もし途中で帰られたら、次長とふたりきりになるところだったのです。
多少の不安はありましたが、支店長がいれば大丈夫、と思いました。
私は「あ、はい」と返事をして、彼らとともに事務所を出ました。




