スナックでの下品な光景を目にして、私はすっかり疲れ果てぐったりしていました。
すると思いがけず、寝ているはずの次長の手が、私の太ももに乗ってきました。
次長を見ると、まだホステスのひざに頭を乗せたまま、目を閉じていました。
私は隣の課長に、これはどういうことかと目で問いました。
課長は焦りの色を面に浮かべて、次長の手をただただ見つめました。
なんとも頼りない。彼は人がいい分、気の弱いところがあったのです。
私は自力で切り抜けなければならぬと判断し、両手の親指と人さし指とで次長の手をつまみあげ、次長を刺激しないように、そっと放り投げました。
きっと、ホステスと私を間違えただけだ……。
私はそう思ったのですが、次長の手は、すぐに私の太ももに戻ってきました。
私は後悔しました。
普段はパンツスーツを着ていたのだけど、この日に限ってタイトスカートをはいていたんです。
この日の朝、起きたときの気分でそうしたのでした。
あらかじめ会長や次長が来ることを知っていたら、絶対スカートなんてはかなかったのに。
次長の手は、スカートから露出している部位にちゃっかりと置かれていました。
寝ながらにしてなんと器用なことであろうかと驚きました。
しかも二回です。
偶然ではなく、薄目でもあけて確認しなければできるはずがないでしょう。
とにかく、次長の手は戻ってきてしまいました。
私はその意味もわからなかったし、どうしたらよいのかもわかりませんでした。
私が戸惑っているのを隣で見守っていた課長は、やはり何も言ってくれませんでした。
課長はどうしても頼りにならないので、私が次に取るべき行動を考えていると、次長が急に起きあがりました。
そして今度は、私の左手を握ってきました。
次長のごく自然といったその行動に、私は一瞬ポカンとなりましたが、しっかり握られている自分の手を見て我に返りました。
「やめてください」
と私は動揺を隠しつつ、次長の手を振りほどきました。
そうすると、横山はなぜかしら嬉しそうに、また私の手を握ってきたのです。
「やめてくださいよ」
私は繰り返し、その手を振り払いました。
それでも次長は生き生きとした表情で、
「ヒャハハハハッ」
と甲高い笑い声をあげて、また私の手を握りしめました。
酔っているのかと思い、私は次長の目を見ました。
その瞳はまどろむことなく、力を持っていました。
どうみても正気の目をしていたのです。
(ホステスと間違えたのではない。私とわかってやっているのだ……)
私は動揺しながらも、横山のしつこさに負けまいと、
「やめてください!」
と、またもその手を振り払わなければなりませんでした。
が、横山は間髪いれずに、
「いいのっ!」
と言いながら、今度は両手で私の手をがっちりと握りました。
何が「いいのっ!」だ?
なんで私がこんな目にあわなきゃならないの!?
私は「やめてください」と言ったのに!
工事部課長代理はカラオケの画面を見ていて、こちらを振り返る様子はまったくありませんでした。
私はどうしていいのかわからなくなりました。
黙ってうつむきました。
少しして次長は、私の左側にむりやり座ると、耳元で言いました。
「あの曲歌ってよ。なんだっけ――あ、そうだ。シルエットロマンス」
それは先輩のM美がよく歌っていた曲でしたが、次長の手から開放されるために、私は歌うことにしました。
前奏が始まると、次長はすぐに私の肩を抱いてきました。
私は、どうしてこんな目にあうのかわからなくて、泣きそうになりながら歌い続けました。
曲の途中、次長はぴったりとくっついてきて、
「ごめんね、ごめんね」
と、たいして悪そうでもなく囁きました。
何について謝っているつもりでしょう。
言葉と行為がまるで矛盾しているではないですか。
その声は何ともいやらしく聞こえ、とても気持ち悪かったです。
そして曲が終わるまで、次長は私の肩を離しませんでした。
ようやく私が歌い終え、課長代理が振り向き、
「そろそろ帰ろうか」
と言ってくれたとき、私はほんとうに嬉しかったのです。
すると思いがけず、寝ているはずの次長の手が、私の太ももに乗ってきました。
次長を見ると、まだホステスのひざに頭を乗せたまま、目を閉じていました。
私は隣の課長に、これはどういうことかと目で問いました。
課長は焦りの色を面に浮かべて、次長の手をただただ見つめました。
なんとも頼りない。彼は人がいい分、気の弱いところがあったのです。
私は自力で切り抜けなければならぬと判断し、両手の親指と人さし指とで次長の手をつまみあげ、次長を刺激しないように、そっと放り投げました。
きっと、ホステスと私を間違えただけだ……。
私はそう思ったのですが、次長の手は、すぐに私の太ももに戻ってきました。
私は後悔しました。
普段はパンツスーツを着ていたのだけど、この日に限ってタイトスカートをはいていたんです。
この日の朝、起きたときの気分でそうしたのでした。
あらかじめ会長や次長が来ることを知っていたら、絶対スカートなんてはかなかったのに。
次長の手は、スカートから露出している部位にちゃっかりと置かれていました。
寝ながらにしてなんと器用なことであろうかと驚きました。
しかも二回です。
偶然ではなく、薄目でもあけて確認しなければできるはずがないでしょう。
とにかく、次長の手は戻ってきてしまいました。
私はその意味もわからなかったし、どうしたらよいのかもわかりませんでした。
私が戸惑っているのを隣で見守っていた課長は、やはり何も言ってくれませんでした。
課長はどうしても頼りにならないので、私が次に取るべき行動を考えていると、次長が急に起きあがりました。
そして今度は、私の左手を握ってきました。
次長のごく自然といったその行動に、私は一瞬ポカンとなりましたが、しっかり握られている自分の手を見て我に返りました。
「やめてください」
と私は動揺を隠しつつ、次長の手を振りほどきました。
そうすると、横山はなぜかしら嬉しそうに、また私の手を握ってきたのです。
「やめてくださいよ」
私は繰り返し、その手を振り払いました。
それでも次長は生き生きとした表情で、
「ヒャハハハハッ」
と甲高い笑い声をあげて、また私の手を握りしめました。
酔っているのかと思い、私は次長の目を見ました。
その瞳はまどろむことなく、力を持っていました。
どうみても正気の目をしていたのです。
(ホステスと間違えたのではない。私とわかってやっているのだ……)
私は動揺しながらも、横山のしつこさに負けまいと、
「やめてください!」
と、またもその手を振り払わなければなりませんでした。
が、横山は間髪いれずに、
「いいのっ!」
と言いながら、今度は両手で私の手をがっちりと握りました。
何が「いいのっ!」だ?
なんで私がこんな目にあわなきゃならないの!?
私は「やめてください」と言ったのに!
工事部課長代理はカラオケの画面を見ていて、こちらを振り返る様子はまったくありませんでした。
私はどうしていいのかわからなくなりました。
黙ってうつむきました。
少しして次長は、私の左側にむりやり座ると、耳元で言いました。
「あの曲歌ってよ。なんだっけ――あ、そうだ。シルエットロマンス」
それは先輩のM美がよく歌っていた曲でしたが、次長の手から開放されるために、私は歌うことにしました。
前奏が始まると、次長はすぐに私の肩を抱いてきました。
私は、どうしてこんな目にあうのかわからなくて、泣きそうになりながら歌い続けました。
曲の途中、次長はぴったりとくっついてきて、
「ごめんね、ごめんね」
と、たいして悪そうでもなく囁きました。
何について謝っているつもりでしょう。
言葉と行為がまるで矛盾しているではないですか。
その声は何ともいやらしく聞こえ、とても気持ち悪かったです。
そして曲が終わるまで、次長は私の肩を離しませんでした。
ようやく私が歌い終え、課長代理が振り向き、
「そろそろ帰ろうか」
と言ってくれたとき、私はほんとうに嬉しかったのです。




