『セクシュアルハラスメント』と『セカンドハラスメント(二次的嫌がらせ)』の被害者の声です。
TOP > CATEGORY − B-12言葉は人を殺せる
会社代理人と連絡が取れなくなってからの数カ月間は、裁判に至るのか至らないのか、はっきりしない時期でした。
できれば示談で終わりにしたかったけれど、M弁護士の話から察するに、おそらく会社は示談に応じないだろうと思いました。

私は部屋でひとり、考えていました。
もしも、裁判に至ったら……。ほんとうにそのときがきてしまったら……。

裁判をしない選択もありました。たぶん、そうすれば楽になれたでしょう。
でも、そう考えるすぐあとから、W(支店長)を許せないという気持ちが追いかけてきました。ふたつを思い比べたならば、やはりWを許してはならないという心念のほうが勝りました。私は弱い人間だけど、いや弱い人間だからこそ、どうしても許せなかったのです。

私の胸に刻まれたあの言葉は、生涯忘れることはないでしょう。

要は彼女の性格の問題だ

思い出すたびに心を打ち砕かれました。私はこの言葉によって、言葉が人を殺せることを知ったのです。知りたくありませんでした。

みじめで、痛くて、私は泣きました。
助けて!
心の中で叫びながら、この痛みは誰にもわかってもらえないだろうと思いました。

もちろん私には、父がいて、母がいて、N氏がいて、M弁護士がいました。しかし、どんなに支えてくれる人たちがいても、傷ついていたのは私で、傷をかばいながらひとり必死に闘わなければならないは私だったのです。そのことを痛感しました。

どうしようもない孤独の中で、私は泣き続けました。
消えてなくなりたい……。どこかに消えてしまいたい……。
心から願いました。
眠るように死にたい……睡眠薬か、あるいは凍死がいい。
でも、薬は入手できない。凍死にしても同じでした。冬山に登るとか、業務用冷蔵庫のある場所を探すとか、そんなことは非現実的でした。
ならば、とほかの方法を一つひとつ頭の中に並べていきました。
どれもが死後の無惨な姿を想像させました。
最もこわかったのは、死体となった私を見た親がどうなってしまうのか、ということでした。
帰らぬ娘を前にしている、年老いた父と母の後ろ姿がまぶたに浮かびました。

……それは絶対にできない。
私は泣きに泣きました。

そうしてジレンマに陥ったのです。
死ねないのに、死にたい。
死にたいのに、死ねない。
死ねないのであれば、乗り越えていかなければならない。
でも、乗り越えてゆく力はない。
それでも乗り越えなければならない。

この逃げ場のない苦境に、頭がおかしくなりそうでした。
どうしてこんなふうになってしまったのだろう。人並みにいろいろあったけれど、そこそこの人生を歩んできた。それなのに、どうして、T山という石につまずかなければならなかったのか。どこで何を間違ってしまったというのか。
D(会長)に相談などしなければよかったのだろうか。もっとさかのぼり、被害を受けてすぐの段階で、T山に直訴でもすればよかったのだろうか。それとも、Wの言うように、すべて私のせいなのか……。

Wの、自信たっぷりの声が聞こえてきました。

要は彼女の性格の問題だ

そんなひどいこと、あるわけがない。でも、ほんとうは、すべて私のせいなのか? 私が、私という人間だから? もしも男だったら、こんなことでつまずくことはなかった? 私が女だったがために……女でありさえしなければ……。

そうだ。
私がいなければよかったんだ。

私はとうとう、自分の存在を受け入れられなくなりました。
もう、だめになる――そう感じました。精神が壊れていく感覚。死ぬよりも危険な状態でした。抵抗はできそうにありませんでした。

私は静かに目を閉じました。


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